お稽古はじめて40年
2020/03/04
私がお能の稽古を始めたのは18歳の春。女子大生ブームの当時、華やかな新歓での数々の勧誘を尻目に、“能楽研究会”という渋いクラブを選んだのでした。なぜなら先輩の袴姿が美しかったから。大学のキャンパスで女性が男袴を穿いて颯爽と歩いていたら、そりゃ目立ちますよ。
「すぐに謡って舞えるようになるのよ」「着付けもタダで学べるし!」「他校との交流が盛んで発表会も年に2回・・・」などなどのお言葉も刺さり、5月からさっそく活動に参加しました。そのとき稽古場にいらしたのが今の師匠でもある能楽師の今井泰行師。私の父もたまたま同じ宝生流という流儀の謡をやっていたため、色々バックアップしてくれるかも!という計算も働いたのですね。
能研で過ごした4年間の思い出、それは楽しいものでした。舞台に向けて直向きに稽古した。合宿ではみんなで海に向かって謡った。他校の友と謡や舞の技について熱く語り合った。要するに文化系だけど中身は体育会系なのです。
あれからもうすぐ40年です。社会人になってからも稽古は続けましたが、学生の頃に覚えた曲は身体に染みていて忘れることはありません。お能の稽古は、足袋と扇と謡本があればすぐに始められるシンプルなものです。でも終わりは無い。
私が33年間サラリーマンを続けられたのは、稽古があったからだと言えます。
でも稽古って何だろう。趣味のお教室とはちょっと違う、日本独特の様式とか精神性があるように思います。
40年続けた今に思う「稽古」のことを、つらつらと書き記していければと思っています。